校長日誌

東日本大震災に学ぶ

2013年3月13日 22時50分

校長原稿②     東日本大震災に学ぶ
                        校長 大津 清

 平成23年3月11日に東日本大震災が発生して甚大な被害を受けた。被災地及び被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 東日本大震災が発生した時は前任校の東根工業高校にいた。その時の様子を振り返ってみたい。
 午後2時46分、東日本大震災が起こった。震度5強の揺れが3分間以上にわたり続いた。その揺れが非常に長く感じた。正面玄関に避難したが木々は根元から揺れて、「木が倒れるぞ、あぶない、離れろ」と叫んだ。地震がおさまった後に職員の安否確認、余震に注意しながら校舎内外の安全確認を行った。
 地震直後に停電となり、電話もつながらない状況になった。安否の確認はメールで行った。地震前から降り始めた雪は、夕方には積雪となった。学校を17時過ぎに出て、風雪となった60kmの道のりを帰宅した。停電のため信号機の動作しない交差点では互いに譲り合って運転した。ようやく自宅に着いてほっとした。しかし、その日の停電は、復旧せず、懐中電灯をつけて寒い不安な一夜を過ごした。

 千年に一度といわれる東日本大震災に遭遇し、私たちは、何を学ぶべきなのか。そして自分にできることは何であろうか。

 まず、第一に人間と自然の関係を考えさせられた。
 高度に進んだ科学技術に浴して恩恵を受けていると自然の力を忘れ、人間や科学の力を過信しがちになる。西欧人は自然を征服するものと考えるが、日本人は昔から自然とともに生きるという考え方がある。人間は自然と共存しながら生きていくことを思い起こした。

 第二にエネルギーを大切にしていかなければならない。
 停電になると電話が不通となり、暖房も止まり、公共交通機関なども使えなくなるのである。ガソリンも手に入らず、ガソリンスタンドには長蛇の列が作られていた。私も週末に朝3時からその列に並んだ。節電などエネルギーを大切にしていかなければならない。エネルギーの重要性を再認識した。本校では、化石燃料に依存しない「ゼロエミッションプロジェクト」を実施しているが、さらに、自然エネルギー利用の研究を行っていきたい。

 第三に絆や思いやりを大切にしなければならない。
 地震後2週間ほどガソリン不足から自宅に帰れず、周りの先生からは「家に泊まれ」と温かい声をかけていただいたがホテルや近くの旅館を点々とした。ホテルでは食事を準備できず、スナック菓子などを食事がわりにして過ごした。旅館では、お客のためにと懸命に食料を手に入れて朝食を出していた。そのご飯とみそ汁の何とおいしいことか。宿泊した旅館では、「息子の通勤路の途中に学校があるので車で学校へ送っていくがら」といわれ、送っていただいた。ありがたかった。被災された方々はどんなに苦労をしているだろう。私たちは手助けや支援をしていかなければならない。
 本校生徒会は「LINKプロジェクト」と名付けて、東日本大震災避難者支援コンサート&イベント、石巻市復旧ボランティアなどの活動に取り組んできた。これからも実践していきたい。

 第四に、被災者の方々に思いを寄せ、一生懸命に生きることである。
 誰でもができることは何か。それは、被災者の方々に心を寄せて、今の自分の務めを果たすために全力を尽くして努力を積み重ね、一日一日を大切にして精一杯生きていくことである。

 米工生よ、何を学ぶべきか、何ができるかよく考えて、実行して欲しい。今年一年良い年であるように祈らずにはいられない。
 あらた とし  はじ   はつはる  きょうふ ゆき     し  よごと
 新しき 年の始めの 初春の 今日降る雪の いや重け吉事
「新しい年の初めの今日の降る雪のように、良いことが重なるように」の意。「万葉集」の最後の歌である。さまざまな困難に遭遇していた大伴家持の祈りである。                  平成24年1月6日記
「鶴声第119号(全日制生徒会誌)、平成24年3月1日発行より」