校長日誌

スティーブ・ジョブズに学ぶ

2013年3月14日 08時04分

校長原稿③                      スティーブ・ジョブズに学ぶ
                           校長 大津 清

 2011年10月5日にスティーブ・ジョブズ(1955-2011)が亡くなった。享年56歳であった。今、私の目の前に、彼が作ったパソコンの名機「アップルⅡ」がある。教員1年目の昭和55年1月に賞与や貯金を費やして購入した。ジョブズについては皆さんも知っていると思う。彼は、iPhoneなどを世に送り出し、世界を変えた人である。彼は、21歳の時にアップル社を創業した。自宅の小さなガレージで始めたこの会社が世界を変えていくのである。それでは、どんな人なのか。

 第一に、これまでの概念を次々に変え、世界を変えた人である。
 「Mac」を1984年に発売した。パソコンは高度な専門家の使うものという概念から普通の人でも使えるように変え、視覚的な操作性を実現した斬新な未来のパソコンの姿を提示したのである。「iPod」は、音楽をCDで聞くものという概念から手もとで聞くものに変えた。さらに、「iPhone」は、タッチパネルや重力センサーを取り付け、直感的に操作できるものに変え、携帯電話の進化の道を切り拓いた。
 「次にどんな夢を描けるか、それがいつも重要だ」(ジョブズの言葉)

 第二に、常に夢やビジョンを持って、世界を驚かす新製品を生み出した人である。
 「アップルⅠ」は、1976年に発売された世界初のパソコンである。「トイ・ストーリー」は1995年に大ヒットした世界初のCG映画である。タブレット型パソコン「iPad」(2010年発売)は、若者から高齢者まで使用できる世界初のデジタル製品である。
 「あなたと僕は未来をつくるんです」(ジョブズの言葉)

 第三に、何度も挫折を味わいながら夢を実現した人である。
 1972年にオレゴン州リード大学に進学するが、半年後に退学している。また、アップル社で「Mac」を生み出し、大富豪になったかと思うと、自分で創業した会社を追放される。彼は、ネクスト社を創業しピクサーを買収するが赤字続きの経営的に失敗の経営であったが情熱を持ち続け、「トイ・ストーリー」を作り、アップルの暫定CEOに復活し、倒産寸前のアップル社を再建するのである。その時、再建を任されたジョブズの給料は「年俸1ドル」であった。ビジネスは単なる金儲けではなく、人生をかけるに値する素晴らしいものであることを示してくれた。
2004年膵臓(すいぞう)がんの摘出手術など大病をわずらい乗り越えている。
 「最初は荒涼としたもので、あきらめようかと何度も思った」(ジョブズの言葉)

 2005年には、米国スタンフォード大学卒業式で感動的な記念スピーチを行っている。下記にその一部を紹介する。
①未来に先回りして点と点をつなげて見ることはできない、君たちにできるのは過去を振り返ってつなげることだけなんだ。だからこそバラバラの点であっても将来それが何らかのかたちで必ずつながっていくと信じなくてはならない。
②人生には時としてレンガで頭をぶん殴られるようなひどいことも起こるものなのです。だけど、信念を放り投げちゃいけない。私がくじけずにやってこれたのはただ一つ、自分のやっている仕事が好きだという、その気持ちがあったからです。皆さんも自分がやって好きなことを見つけなきゃいけない。素晴らしい仕事をしたいと思うなら進むべき道はただ一つ、好きなことを仕事にすることなんですね。まだ見つかってないなら探し続ければいい。
③私は17の時、このような言葉をどこかで読みました。「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう」。それは私にとって強烈な印象を与える言葉でした。そしてそれから現在に至るまで33年間、私は毎朝鏡を見て自分にこう問い掛けるのを日課としてきました。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」。
 ハングリーであれ。愚か者であれ。私は常に自分自身そうありたいと願い続けてきた。そして今、卒業して新たな人生に踏み出す君たちに、それを願って止みません。
    スタンフォード大学卒業式での記念スピーチより(市村佐登美訳抜粋) 

 スティーブ・ジョブズの生涯はその数々の成功と挫折を何度も繰り返しながら歩んだものであった。その生き方は、私たちに大きな夢と勇気と希望を与えくれる。
 私たちに今何をなすべきか教えているように思う。その生き方を学んでいきたい。
 彼はいつも夢と大きなビジョンを持ち挑戦していった。その夢を情熱を持って育て、実現させた偉大な人物である。          平成25年1月20日記
「Voice第64号(定時制生徒会誌)、平成25年3月3日発行より」

参考 スティーブ・ジョブズ、ウォルター・アイザックソン著井口耕二訳、講談社
    スティーブ・ジョブズ名語録 人生に革命を起こす96の言葉、桑原晃弥著、PHP研究所
    スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ、竹内一正著、知的生きかた文庫
    スティーブ・ジョブズの哲学、竹内一正著、だいわ文庫

スティーブ・ジョブズは、もういない。誰が未来をつくるのか。
まさに、「あなたと僕は未来をつくるんです。」(ジョブズの言葉)
米工生よ 夢と勇気を持ってチャレンジしていって欲しい。